九州大学 大学院農学研究院 園芸学研究室    (農学部・大学院生物資源環境科学府)

九州大学 大学院農学研究院 園芸学研究室    (農学部・大学院生物資源環境科学府)

メニュー

研究紹介

教員の研究活動

主な研究対象植物

 おもな研究対象植物は、以下の通りです。

これまでの主な研究の紹介

 随時更新予定です。


★ ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における覆輪形成機構

 ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における覆輪形成機構を明らかにするため、花弁の赤色部位と白色部位におけるアントシアニン生合成遺伝子(CjCHS、CjF3Ha、CjDFR、CjANS)の発現を比較しました。対照として、野生型ヤブツバキの赤色花弁も調査しました。その結果、野生型ヤブツバキ赤色花弁、‘玉之浦’花弁赤色部位では、すべてのアントシアニン遺伝子が発現していたのに対し、‘玉之浦’花弁白色部位では、CjCHS遺伝子の発現のみが抑制されていることが分かりました。
 この結果から、‘玉之浦’花弁における白覆輪形成は、花弁周縁部におけるCHS(カルコン合成酵素)遺伝子の発現抑制に起因しているていると考えられました。

【参考】Tateishi, N., Y. Ozaki and H. Okubo. 2010. White marginal picotee formation in the petals of Camellia japonica 'Tamanoura'. Journal of the  Japanese Society for Horticultural Science. 79 (2): 207-214. 

DOI: https://doi.org/10.2503/jjshs1.79.207



ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における覆輪形成機構

ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における覆輪形成機構

★ 日本各地のヤブツバキ集団における葉緑体DNA変異と‘玉之浦’の起源

 従来、ヤブツバキの葉緑体DNAは単一タイプであることが報告されていましたが、‘玉之浦’の葉緑体DNAはこのタイプとは異なっていました。そこで、日本自生のヤブツバキにおける葉緑体DNA変異を調査するとともに、‘玉之浦’の起源について考察しました。

 日本各地に自生するヤブツバキを対象として葉緑体DNA2領域を調査した結果、Haplotype Ia、Ib、IIIの3種類のハプロタイプが認められました。ヤブツバキの葉緑体DNA変異には地理的に大きな偏りが見られ、長崎県五島列島および壱岐・対馬において顕著な変異が認められました。’玉之浦’はHaplotype IIIに属しており、わずかな割合で存在する同タイプのヤブツバキから派生した系統であると推察されました。

【参考】Tateishi, N., H. Okubo and Y. Ozaki. 2010. Chloroplast DNA phylogeny in the genus Camellia in Japan. Acta Horticulturae. 885: 367-373.

DOI: https://doi.org/10.17660/ActaHortic.2010.885.52

Tateishi, N., M. Oishi, Y. Ozaki and H. Okubo. 2007. Chloroplast DNA variation in the genus Camellia with reference to the origin of 'Tamanoura'. The Journal of Horticultural Science & Biotechnology. 82(3): 377-382.

DOI: https://doi.org/10.1080/14620316.2007.11512246



日本各地のヤブツバキ集団における葉緑体DNA変異

日本各地のヤブツバキ集団における葉緑体DNA変異

★ 日長が食用ハス(レンコン)根茎の肥大・伸長に及ぼす影響

 食用ハス(レンコン)の根茎(地下茎)は、春の気温の上昇にともなって伸長し、晩夏〜秋頃にその先端部が肥大します。この研究では、食用ハスの生理生態的特性について明らかにするため、実生を用いたコンパクトな実験系を用いて、根茎の肥大・伸長に及ぼす環境要因の影響について調査しました。

 異なる日長条件(8〜14時間日長)で栽培したところ、13時間以上の日長では根茎が肥大せず、12時間以下の日長では根茎が肥大しました。このことから、根茎肥大は短日によって誘導され、その限界日長は12〜13時間の範囲にあることが分かりました。

 8時間日長、および8時間日長の明期の前後に、青、緑、黄、赤、遠赤色光による3時間ずつ(合計6時間)の補光を行ったところ、黄色光と赤色光でのみ根茎が肥大せず伸長しました。また、8時間日長、および8時間日長の暗期に、青、緑、黄、赤、遠赤色光で2時間の光中断を行ったところ、黄色光と赤色光でのみ根茎が伸長しました。

 8時間日長区、8時間日長区の暗期開始8時間後に赤色光(R)で5分照射する区、および赤色光-遠赤色光(R/FR)、赤色光-遠赤色光-赤色光(R/FR/R)をそれぞれ5分間ずつ連続照射する区を設けて栽培を行いました。8時間日長区では根茎が肥大しましたが、R区では根茎が肥大せず伸長しました。R/FR区では根茎が伸長せずに肥大し、R/FR/R区では根茎が肥大せずに伸長しました。

 以上の結果から、食用ハスの根茎肥大は短日によって誘導され、この日長反応にはフィトクロムが関与していることが明らかになりました。

【参考】Masuda, J.-I., Y. Ozaki and H. Okubo. 2007. Rhizome transition to storage organ is under phytochrome control in lotus (Nelumbo nucifera). Planta. 226(4): 909-915.

DOI: https://doi.org/10.1007/s00425-007-0536-9

Masuda, J.-I., T. Urakawa, Y. Ozaki and H. Okubo. 2006. Short photoperiod induces dormancy in lotus (Nelumbo nucifera). Annals of Botany. 97: 39-45.

DOI: https://doi.org/10.1093/aob/mcj008



日長が食用ハス(レンコン)根茎の生育に及ぼす影響

日長が食用ハス(レンコン)根茎の生育に及ぼす影響

X